ヒノヒカリというお米をご存じですか?
「コシヒカリは食べたことあるけれど、ヒノヒカリはない」という人も多いのではないでしょうか。誕生して日は浅いですが、評判の高いお米なんですよ。名前がコシヒカリと似ていますが、歴史や特徴はまったく異なります。
今回は、2品種の歴史や特徴の違いをまとめました。産地や食感の違いを知ると、色々食べ比べしたくなるかも?ぜひご一読ください。
コシヒカリの歴史と味の特徴
まずは味を評価する食味ランキングで、最高評価の特Aランクを何度も獲得しているコシヒカリの歴史と特徴を解説します。普段何気なく食べているお米も、改めて歴史や食感の特徴を知ることで味わいが変わるかもしれません。
歴史と産地
コシヒカリは1944年(昭和19年)に高品質で美味しく、いもち病に強い品種作りを目的として新潟県で開発が始まりました。「農林22号」と「農林1号」を掛け合わせた結果、コシヒカリの他4品種が誕生(ヤマセニシキ、ハツニシキ、ホウネンワセ、越路早生)が誕生します。
この時、唯一いもち病に弱い難点を克服できなかったのがコシヒカリです。つまり、劣等生でした。捨てるか迷いながらも味と品質が高いことから活用できないかと考え、全国の試験場に試作を依頼。千葉県の後押しもあり1956年(昭和31年)に「農林100号」として農林省に登録、のちにコシヒカリと名付けられたのです。
現在では、新潟県や福島県を始めとして全国各地で栽培されています。スーパーのお米売り場には必ずと言っていいほど置いてあるため、一度は食べたことがある人も多いのではないでしょうか。
味や食感
コシヒカリの特徴は、何と言っても強い旨味と弾力。もっちりの食感で、噛めば噛むほど口の中に独特の豊かな甘みが広がります。おかずなしでも楽しめるほど味の濃いコシヒカリは、ついつい食べ過ぎてしまうかもしれません。
冷めると硬くなる性質を持つアミロースが少ないため、おにぎりやお弁当にもピッタリ。家庭用のみならず、業務用でも人気のあるお米です。
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ヒノヒカリの歴史と味の特徴
九州を代表する品種の一つがヒノヒカリです。誕生から日は浅いですが、コシヒカリを父に持っているため味はお墨付き。しかし、コシヒカリとは違う魅力を持っています。ここでは、ヒノヒカリの歴史と味の特徴を詳しく見ていきましょう。
歴史と産地
ヒノヒカリの開発が始まったのは、1979年(昭和54年)です。従来の九州では、味よりも収穫量が重視されており、ニシホマレやミナミニシキが主流でした。しかし、自主流通米制度ができてからは、味の良いコシヒカリやあきたこまちが注目されるように。
たくさん収穫できても味が落ちるお米は、次第に見向きもされなくなってしまったのです。宮崎で栽培されているコシヒカリもありましたが、収穫量が少なく長期保存で味が落ちる欠点を持っていました。そこでコシヒカリに負けない美味しいお米作りが求められ、宮崎県総合農業試験場にて研究が始まったのです。
1979年からミナミニシキやニシホマレをコシヒカリと交配し、様々な個体が誕生します。なかでも「み系451」と番号が付けられた系統の食味は、最上級のコシヒカリと同レベルでした。その後「南海102号」という地方系統名が付けられ、1986年(昭和61年)から九州の各県に配布され、試験栽培をスタートさせます。
その後、1989年(平成元年)に沖縄県を除く九州各県の奨励品種に指定され、ヒノヒカリが誕生しました。
2021年時点では、3番目に多く栽培されている人気品種です。九州を代表するお米と言っても過言ではないでしょう。主な産地には熊本県、福岡県、佐賀県、大分県があります。
味や食感
ヒノヒカリの特徴は粘りや香り、旨味のバランスが良くふんわりした甘みがあることです。コシヒカリを父に持つため味は似ていますが、ヒノヒカリのほうがさっぱりした味わいとなっています。
他のお米に比べると、やや小粒で丸い形が印象的。炊いた時にはツヤツヤと光輝いています。まさにヒノヒカリの名前通りですね。食感はやや硬めですが、ソースやケチャップなど調味料を加えてもべちゃっとしません。そのため、お米本来の味を楽しめるでしょう。コシヒカリ同様に冷めても味が落ちにくいのも特徴です。
コシヒカリとヒノヒカリを徹底比較
ヒノヒカリはコシヒカリを掛け合わせて作られているとはいえ、歴史も特徴も違います。他にも4つの視点から徹底比較してみました。
- 相性の良いおかず
- 弱み
- 値段
- 食味ランキング
それぞれ詳しく解説します。
相性の良いおかず
コシヒカリはお米自体の味が強いため、おかずもガツンと濃い味がおすすめ。ハンバーグやとんかつなどの肉料理はもちろん、漬物や塩辛など飯の友と呼ばれるような食べ物とも相性抜群です。
旨味や粘りのバランスが取れたヒノヒカリも、濃い味のおかずを引き立ててくれます。粒が硬めなのでオムライスやチャーハン、丼ものにも合うでしょう。一方で、コシヒカリほど味が濃くないので、サッパリとしたおかずとも相性ぴったりです。魚料理と合わせても美味しく食べられますよ。
弱み
評価の高い2品種ですが、弱みもあります。コシヒカリの欠点は背が高く倒れやすいのと、稲の天敵であるいもち病に弱い点です。いもち病に感染すると、収穫前の穂を枯れさせてしまうことに。発生させないために種子消毒の徹底、すでに被害を受けた藁やもみを放置しないなどの工夫をして防いでいます。
ヒノヒカリは高温への耐性が弱いのが欠点です。九州は元々暖かい地域ですが、近年の猛暑には耐性がなく背白などの白未熟粒が増えています。そのため、各県の農業試験場がヒノヒカリと同等の食味を持ったお米の品種改良・育成に取り組んでいます。
値段
2023年1月現在ではコシヒカリが5kgあたり2,000〜3,500円程度、ヒノヒカリは2,000~4,000円程度となっています。若干ヒノヒカリの値幅が大きいですが、全体的に同程度の値段な印象です。産地や収穫した年によっても異なるので、購入の際に比較するとよいでしょう。
2022年度(令和4年度)のお米収穫量は平年並みとされているので、大きな価格変動はないと予想されます。
食味ランキング
2022年の食味ランキングでは、どちらも最高ランクの特Aを獲得していました。ただし、同じ品種でも産地によってランクは異なります。2022年の食味ランキングで特Aランクを獲得している産地は以下の通りです。
銘柄 | 特Aランクを獲得した都道府県 |
コシヒカリ | 福島県、新潟県、長野県、茨城県、千葉県、岐阜県、滋賀県、兵庫県、鳥取県 |
ヒノヒカリ | 宮崎県 |
九州地方が中心のヒノヒカリに比べ、コシヒカリは全国的に栽培されているため特Aランクを獲得している産地も多くあります。同じ品種でも産地によって特徴が異なるので、食べ比べしてみるのも楽しいですよ。
まとめ
2品種の違いを様々な視点から解説しました。普段何気なく食べているお米も、特徴を意識して味わうと違った楽しみ方ができます。色々食べ比べて、お気に入りの組み合わせを探してみてください。
新潟にある米工房いわむろでは、美味しいコシヒカリを栽培しています。恵まれた気候の中で愛情かけて育ったお米の味は格別。ぜひ一度ご賞味くださいね。
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