玄米を浸水なしで炊くとどうなる?危険性や「びっくり炊き」の方法も紹介

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玄米は栄養が豊富で、完全栄養食として注目が集まっている食べ物です。

その一方、炊く前に長時間の浸水が必要なため、「毎日の手間を考えると億劫で手が出せない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、以下のような疑問にお答えします。ぜひ最後までご覧ください。

  • 玄米を浸水しないとどうなるか知りたい
  • 正しい浸水方法が知りたい
  • でも浸水する時間がない
  • 浸水なしで炊く方法を知りたい

玄米を浸水なしで炊くとどうなる?

玄米を浸水なしで炊くと、以下の2点が懸念されます。

  1. 炊き上がりが固くなる
  2. 毒素が気になるという声も

一つ目の「炊きあがりが固くなる」は何となくイメージができるものの、二つ目にある「毒素」とはどういうことでしょうか。順番に確認していきましょう。

1.炊き上がりが固くなる

玄米を浸水なしで炊くと、玄米のおいしさが引き出されずに固くなるという懸念があります。いわゆる「芯が残る」という状態です。

玄米をはじめ、お米には多くのデンプンが含まれています。生のお米のデンプンは非常に硬い「βデンプン」と呼ばれる状態で、噛み砕くにも硬く、消化もされにくいデンプンです。このβデンプンに十分な水と熱を加えることで、やわらかくて消化しやすく、味もいい「αデンプン」に変化します。

炊き上がっても芯が残っているお米は、硬いβデンプンが残っているということ。間違っても「おいしい」とはいえない仕上がり。

2.毒素が気になるという声も

玄米に含まれる物質が人体にとって毒になるのではないか、と心配する声も聞こえてきます。

対象の物質は以下の2点。体内に入ると細胞内のミトコンドリアを傷つけたり、ミネラルの吸収を阻害したりするとウワサされ、それが原因で玄米を避ける方もいらっしゃるようです。

  • アブシジン酸
  • フィチン酸

結論からいえば、この2つの物質に対して心配する必要はまったくありません。それぞれの物質の特徴や、心配の必要がない理由を次の項で詳しく確認しましょう。

毒素として懸念されるアブシジン酸・フィチン酸

アブシジン酸とフィチン酸はいったいどのような物質なのでしょうか。また、どのような点が人体に有害と懸念されているのでしょうか。

アブシジン酸とは

アブシジン酸は穀類に多く含まれる植物ホルモンの一種で、植物の生命活動にとって欠かせない働きをしています。例えば以下のような働きです。

  • 植物表面の気孔を閉じ、蒸散(水分の放出)を抑制する働き
  • 種子の正常な発達と成熟を促す働き
  • 適切な季節になるまで種子の発芽を抑制する働き

アブシジン酸に対する懸念の声

アブシジン酸を摂取すると、人体にとって以下のような害があるのではないかという声があります。

  • 細胞内のミトコンドリアを傷つける
  • 成長ホルモンの働きを阻害する
  • 体を冷やす
  • 免疫力を下げる
  • ガンの発症リスクが上がる

アブシジン酸の危険性は低い

アブシジン酸に対する上記のような懸念は単なるウワサ話。食品安全委員会によって、アブシジン酸を含む植物調節剤を食品から摂取しても健康を損なう恐れがないと報告されています。

各種毒性試験の結果から、アブシシン酸の食品を経由したばく露により問題となる毒性所見は認められなかった。また、アブシシン酸は、植物ホルモンの一種であり、植物体内に分布しており、既に広く摂取されている。
以上のことから、アブシシン酸は、農薬として想定しうる使用方法に基づき通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると考えられる。

出典:食品安全委員会 対象外物質評価書 アブシシン酸

このようにアブシジン酸の危険性は否定されていますが、玄米からの摂取がどうしても心配という方もいらっしゃるかもしれません。

その場合は、玄米を一晩以上浸水してから炊くのがおすすめです。

アブシジン酸は発芽を抑制する植物ホルモンのため、玄米をじっくり浸水して発芽直前の状態に近づけることで不活性化するといわれています。

フィチン酸とは

フィチン酸は、食物繊維の多い植物に多く含まれる抗酸化物質のこと。玄米の糠(ぬか)の部分や、小麦・豆類・ごま・トウモロコシ・ナッツにも多く含まれています。

動物の細胞にも少し存在しており、細胞の分裂や増殖に深くかかわっている重要な物質です。

フィチン酸に対する懸念の声

フィチン酸にはミネラルの吸収を妨げる働きがあります。

それが人体に必要なミネラルの欠乏症をおこすのではないかとの憶測を生み、フィチン酸が豊富な玄米と結びつけられて、玄米食に対する懸念を生んでいるようです。

フィチン酸の危険性は低い

フィチン酸にミネラルの吸収を妨げる働きがあることは事実です。

ただし、これが問題になるのは特定の食品だけを食べ続ける生活をしている国・地域だけで、バランスの良い食生活をしている限りは体に悪影響が出ることはありません。

Therefore, in well-balanced diets, the inhibitory effects of IP6 in the binding of minerals is low and there is little evidence from nutritional surveys that in a well-nourished population, dietary phytate may have a negative effect on the absorption of minerals

※訳
したがって、バランスの取れた食事では、ミネラルの結合における IP6 の阻害効果は低く、栄養状態の良い集団では、食事からのフィチン酸塩がミネラルの吸収に悪影響を及ぼす可能性があるという栄養調査からの証拠はほとんどありません

出典:Phytic Acid: From Antinutritional to Multiple Protection Factor of Organic Systems

また、フィチン酸のミネラル吸収阻害の働きを弱めるには、その食品を発芽や発酵、浸漬、調理、消化することが有効だと分かっています。つまり、玄米を炊飯して食べるだけでフィチン酸の効果は弱まるということです。

更に、フィチン酸は危険性が低いばかりか、直近の研究では各種のがんの予防に役立つ可能性があると期待されています。

参考:フィチン酸の栄養的再評価―ミオイノシトールとの共通性を中心に―

心配しすぎは不要!おいしさのために浸水を

玄米に含まれるアブシジン酸・フィチン酸は危険性がないことが分かりました。それでも不安が残る場合は、玄米を十分に浸水することで対策できます。

なにより、浸水は玄米をおいしく食べるために非常に重要な工程です。正しい浸水方法を覚えて実践してみましょう。

玄米の基本の浸水方法

玄米をおいしく炊くためには、正しい方法で十分に浸水することが重要です。

玄米にはもともと乳酸菌が付着しているため、工夫なしに浸水すると乳酸菌が繁殖してイヤなニオイの原因になってしまいます。また浸水時間が不十分では水が浸みきらず、芯までふっくら炊き上がりません。

おいしく炊き上げるための浸水方法を確認していきましょう。

【関連記事】
玄米の臭いはなぜ独特?解消する方法5選も紹介

まずは洗い方をチェック

玄米の正しい浸水は、正しい洗い方から。

玄米は白米と比較して長時間の浸水が必要です。その間に乳酸菌や雑菌が繁殖してニオイが発生しやすいため、しっかり洗って過剰な菌を落としておくことが大事。

また表面を糠(ぬか)の層を少し傷つけて、水を吸いやすくしてあげることも大切です。

【玄米の洗い方】

  1. 玄米を洗いやすい容器に入れます。
  2. 多めに水を入れ、さっと混ぜたらすぐに水を捨てます。玄米は一番最初に触れる水をもっとも吸収するので、汚れた水はすぐに捨てましょう。
  3. 水を捨てた状態で玄米を丁寧に洗っていきます。ボウルとザルを重ねている場合は、玄米をザルに押し付けるようにしてこすります。ボウルのみで洗う場合は、玄米を両手でこすり合わせるようにして10回程度洗います。
  4. 再び水を入れてさっと混ぜ、水を捨てます。これを2〜3回繰り返します。

【補足】

  • 玄米のニオイが気にならない方や、玄米特有のプチプチした食感を味わいたいという方は、糠を傷つけない洗い方がおすすめです。
  • 上記の3・4の手順を変更しましょう。玄米がしっかり沈むくらいの水を入れて玄米を数回混ぜ、ゴミを浮かせて水を捨てます。これを2~3回繰り返します。

浸水は8~12時間が目安

洗い終わった玄米を8~12時間を目安に浸水させます。

夏場は8時間、冬場は12時間が理想ですが、時間がない場合は夏場は最低3時間、冬場は最低6時間ほどの浸水でも許容範囲です。時間の余裕や好みの固さに合わせて調整してみましょう。

水温が上がるとニオイが発生しやすいため、室温が低い季節以外は冷蔵庫の中で浸水してください。

水は3~4時間おきに換えましょう。新しい水は冷水を使うとニオイの発生を抑えられます。

発芽玄米を作るなら48時間が目安

浸水時間を延ばすと発芽玄米を作ることも可能です。目安は48時間。夏場は36~48時間ほど、冬場は48~60時間ほどの浸水で発芽し、栄養素がぐっと高まります。

夏場は冷蔵庫に入れ、浸水中は3~4時間おきに水を換えます。1日以上浸水するため、夜は寝る直前に水を換えるのがいいでしょう。

水温によって発芽するまでの時間が変わります。定期的に玄米の様子をチェックしてくださいね。

【関連記事】
玄米と発芽玄米の違いは?気になる栄養価や炊き方も紹介

玄米の基本の炊き方

ここでは、土鍋を使った玄米の基本的な炊き方をご紹介します。ふっくら・もちもちで香ばしい玄米を堪能してください。

【用意するもの】

  • 土鍋
  • 玄米(2合/3合)
  • 水(500ml/750ml)

【炊き方】

  1. 玄米をあらかじめ洗って浸水させておきます。
  2. 玄米の水をしっかり切り、土鍋に入れます。
  3. 水を加えてフタをし、中火で沸騰するまで加熱します。15~20分ほどかかりますので、ときどきフタをとって確認しても問題ありません。
  4. 沸騰したら弱火にし、フタをしたまま25~30分加熱します。
  5. 火を止め、フタをしたまま10分蒸らします。時間になったらフタを開け、しゃもじで底から混ぜたら完成です。

浸水する時間がないときは?対処法2選

玄米には十分な浸水が必要といっても、浸水する時間がなかったり、うっかり浸水を忘れてしまったりすることもあるでしょう。

短い浸水時間で、もしくは浸水なしで玄米を炊くための2つの方法をご紹介します。

1.浸水時間が少なくてOKな玄米を選ぶ

一つ目は、浸水時間が少なくてもいい玄米を選ぶ方法です。

「加工玄米」や「分づき米」といわれるお米で、特に加工玄米は各メーカーの独自の加工によって水を吸いやすいよう工夫されています。

浸水時間は白米と同じくらいか、中には浸水時間が不要なものもあります。

加工玄米

加工玄米とは、玄米の表面に加工を施し、水を吸いやすくした玄米のことです。

玄米の表面は「糊粉層」・「種皮」・「果皮」・「ロウ層」(全てをあわせて糠)に覆われており、水が浸透しにくい構造になっています。

加工玄米は、特に防水性の高いロウ層に傷をつけたり、ロウ層を取り除いたりして水を吸いやすくしているのです。

浸水時間は商品によって異なりますが、30分~2時間ほどのものが多いようです。

分づき米

分づき米とは、糠を一部だけ取り除いた玄米のこと。三分づき米は糠を30%取り除いたもの、五分づき米は50%取り除いたもの、七分づき米は70%取り除いたものです。

一部の糠が取り除かれているのですから、100%糠が付いている玄米に比べて格段に水を吸いやすい状態になっています。

浸水時間は以下を目安にしてください。

  • 三分づき米…5時間ほど
  • 五分づき米…3時間ほど
  • 七分づき米…2時間ほど

2.浸水不要の「びっくり炊き」をする

二つ目は、玄米の浸水がいらない「びっくり炊き」をする方法。

浸水する時間がまったくない。今すぐ玄米を炊き始めたい。そんなときにおすすめの方法です。

「びっくり炊き」とは?

「びっくり炊き」なんておもしろい名前の炊き方があるのか、と驚かれる方もいるかもしれませんね。

「びっくり炊き」は「びっくり水(差し水)」を使うことから名前がついた炊き方。玄米を浸水をしなくても、ふっくら・もちもちに炊き上がると話題の方法です。

「びっくり炊き」の方法

【用意するもの】

  • 土鍋などお好みの鍋(フタができるもの)
  • 玄米(2合/3合)
  • 1回目の水(540ml/810ml)
  • 2回目の水(360ml/540ml)

【びっくり炊きの手順】

  1. 洗い終わった玄米を鍋に入れます。
  2. 1回目の水を鍋に入れ、フタをして強めの中火で20分加熱します。
  3. フタを開けて確認し、水が減ってパチパチ・チリチリと音がしてきたら2回目の水を入れます。
  4. 全体をまぜてフタをし、同じ火加減でさらに15~20分加熱します。
  5. フタを開け、玄米のところどころに指を刺したような穴(カニ穴)があることを確認します。
  6. カニ穴から水が噴き出していなければ火を止め、フタをして10分蒸らします。カニ穴に水があるようなら、水が噴き出さなくなるまで加熱してから火を止めます。
  7. 蒸らし時間が終わったらフタを開け、しゃもじで底から混ぜたら完成です。

まとめ

玄米を浸水なしで通常どおりに炊くと、芯が残って硬くなります。

浸水をしないと毒素(アブシジン酸・フィチン酸)が残るという不安の声も聞こえてきますが、これらの物質の危険性はないと証明されていますので、純粋に玄米をおいしく食べるため、十分な浸水をおこないたいですね。

とはいえ、浸水時間がない・浸水を忘れてしまったというときもあるでしょう。

そんなときは、ご紹介した「びっくり炊き」をぜひ試してみてください。
思い立ったときに玄米を炊くことができ、玄米を生活に取り入れやすくなりますよ。

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